設立趣旨

 パブリック・チョイス・公共選択という用語が用いられる様になって、わが国でも既に20年以上の歳月を経ました。1963年からヴァージニアでブキャナン、タロックを中心に始められた非市場的意思決定Non-Market Decision Makingの研究会が、1967年のシカゴの研究会から公式に公共選択学会になってまもなく30年になろうとしています。

 非市場的意思決定という用語を公共選択という用語に置き換えて、公共選択という言葉は専門用語としてだけではなくて、広く日常的に、外部性という言葉と一緒に用いられるようになっています。経済学や政治学、法学や社会学、そしてその境界領域の非市場的意思決定に関する諸理論の深化、総合化、そして諸問題の解決に向けての公共選択論の応用の領域で私達が一層努力を重ねていかなければなければならない時期に至っていると考えています。

 特に、近年新設されている総合政策学部系学部の中心科目に公共選択がすえられ、公共選択という用語も日本という環境の中で新しい革袋を用意しなければならない時期に至っていると判断します。とりわけ国際化の進展にともない、アジ太平洋地域との関係は国境を越えた密接な経済社会活動の増加にともなって発生している問題領域が広がっているうえに、同じ問題を共有している各地域では急速に公共選択理論の研究者の数を増やしています。そのためにアメリカやヨーロッパの公共選択学会をリードする研究者からアジアでの公共選択学会設立を促す意見を耳にされた方々も多くなっているのではないかと推察いたします。

 世界ではゲーム論の新展開、ハイエクの制度論を基礎にする憲法の政治経済学など新しい領域を加えながら、Rational Choice Theoryの概念自体の位置付けをも問い直されており、日本の研究者もそれぞれの分野で新しい世界に踏み込んでいこうとしています。

 このような状況を踏まえて、わが国の研究の成果を積極的に海外の研究者に紹介し、海外の研究者との共同研究を推進し、マルチメディアを駆使して、世界の公共選択研究の水準を高めるべく、その環境整備の一貫である、結集の場を設定する必要があると考えました。